「お金を返済するよう求める請求書が届いたけど借りた覚えがない。請求書を見ると古い話のようだから、消滅時効の援用の手続をお願いしたい。」と専門家に依頼しようとし
・・・(続きはこちら) 「お金を返済するよう求める請求書が届いたけど借りた覚えがない。請求書を見ると古い話のようだから、消滅時効の援用の手続をお願いしたい。」と専門家に依頼しようとしたら、「借りた覚えがないのであれば、消滅時効を援用するのではなく債務の不存在を主張すべきだ。」と、依頼を断られてしまった、という話を聞いたことがあります。
専門家にこのような対応をされることは稀だとは思いますが、身に覚えのない借金であっても、消滅時効の援用によって解決することは可能です。
裁判を起こされて身に覚えのない借金を請求された場合でさえも、お金を借りたこと自体を否定しつつ、仮に借りたとしても消滅時効が完成しているから原告の請求は認められない、と主張することはありえます。お金を借りたこと自体を否定するのは民事訴訟法の用語で請求の原因に対する否認、消滅時効を主張するのは請求の原因を前提とした抗弁という位置づけになります。否認しつつ抗弁を主張することは可能で、しばしば行われています。
上述した専門家の「消滅時効を援用するのではなく債務の不存在を主張すべき」というのは、否認に徹するべきだということでしょうが、裁判になっていない段階で「借りていないから払わない」と主張しても、借りていないことについての証拠でもない限り請求する側が諦めるとは思えません。そうすると最終的には裁判ということになるでしょうが、裁判を起こされるまで待って裁判で争うのも、こちらから裁判を起こすのも、裁判外で時効を援用するより時間、労力、弁護士費用がかかると思われます。裁判で否認だけを貫いて勝てる保証もありません。
裁判外での時効援用で解決するなら、それが一番簡便だといえます。請求されているお金を支払うつもりがないなら、時効援用をしないことにこだわる理由もあまりないかと思います。
このように、身に覚えのない借金の請求をされた場合でも、消滅時効の援用による解決はありえます。もちろん、必要な期間が経過して時効が完成していることが前提となります。